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Jの消えた日

 
    Jの消えた日




 Jは仮面の下の『底』を探る
 Jにはその人間のこころの底に巣くう魔物が見えるのだ
 Jが魔物に気づくと
 魔物たちもJに気づき
 舌を出してくる
 Jは人間と話したことはない
 
 誰の中にも天使と悪魔がいると
 世の人は言う
 が、Jにとっては
 底にいるその魔物こそが
 人と呼ばれる生き物の本性であると
 心得ていた

 魔物たちは様々な姿をしていた
 怒りにゆがんだ姿
 情欲にゆがんだ姿
 破壊の心にゆがんだ姿
 無知にゆがんだ姿
 そして恐怖にゆがんだ姿
 
 そしてその魔物たちが
 J自身であることも
 Jは痛い程心得ていた

 Jは青く燃える目をした鬼だった
 その本質はこの世を無に返す
 破壊の心と情欲だった

 Jは世界を灰塵へと帰し
 廃墟の中央の黒い塔で
 果てしなき淫靡な宴を続けつつ
 窓の外に荒れ狂う砂嵐を
 不安なまなざしで見つめていた

 ある日Jは老人と会った
 Jは早速『底』を探ったが
 老人に底はなかった
 彼の中にも魔物はいた
 が、魔物たちがいる場所が底ではなかった
 はるかな深みから光が湧き出ており
 老人の中の魔物たちは
 光により半透明となり
 まったくおぞましさを失っていた
 それは罪のない幻影のようだった

 Jは光の中ですべてがほどけていくのを感じた

 Jがもっとも憎み また恐れたもの
 それは魔物としてのJ自身だったのだ
 Jとは 名前なき狂える男が その魔物に付けた
 名前であった

 人を憎み 人を喰い 人を欺き
 決して何ものにも心許すことはない
 形容しがたいこのさびしい生き物だった

 Jの足元から限りない光が湧き上がってきた
 その光がJという存在を溶かし去った時
 彼は知った
 誰の中にも『底』などなかったことを
   
 狂える男が自分が光であったことを知ったとき

 彼の目から魔物を見る力は失われ
 
 Jは人間になった

 たまに遊びに来る青い目の小鬼とJは木漏れ日の中で
 やさしく語り合う
                            


 Dec 2007





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詩集2(火水の子供たち) | コメント(0) | トラックバック(0) | 2011/09/22 22:27
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