卵の中の黄身

我もなく うつし世もなくなにもかも  神の中なる 神のあらわれ  BYダンテス・ダイジ

戦争はなかった

 200年後の僕は
 2006年の世界がどれ程戦いに明け暮れていたか
 古い新聞をめくるみたいに振り返るだろう
 見えない戦争がいつも起こっているこの世界を
 それはたった一人の世界との戦争だった
 数十億の民がそれぞれ数十億の断絶した戦場で
 たった一人で世界と勝ち目のない戦いをしていた
 周りはすべて敵だった
 僕は捕虜を虐待する軍人のように
 薬殺される捕虜のように孤独だった
 親を殺された幼い子供のように
 誰も信用した試しはなかった
 
 見えない戦争の最中で
 僕はいつも祈っていた
 戦争は終わる
 それはまもなく終わるはずだ
 これほどまでに野蛮な世界は
 いつか必ず終わるはずだと

 そして機関銃を投げ出して
 青空に向かって寝転んだ
 殺すなら 殺せ
 殺すなら 殺せ

 そうすると神様が遠くで白旗を振って
 実は
 戦争を起していたのは
 僕だったことに気づいたんだ
 そのようにして
 戦争は終わり
 そして僕は故郷に帰ってきた
 
 そしてこの平和の中にいると
 時々よくわからなくなる
 はたして戦争はあったんだろうか?
 戦争はなかったんだろうか?




 




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  • Author:はいたか鳥
  •  鳥が卵から無理に出ようとする
     卵は世界だ 
     生まれようとするものはひとつの世界を破壊せねばならない
     鳥は神に向かって飛んでいく
     その神は名をアプラクサスという


    なかのひと

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