シャボン玉

 石畳の上で
 小さな女の子がシャボン玉を吹いている
 虹色の透明な世界がいくつもいくつも
 風に乗って舞い上がる
 それらは束の間宙を舞うと
 弾けて消えてしまう
 それでも女の子は飽きることなく
 踊りながら
 大きく息を吐いて
 虹色の世界を空へと放ち続ける

 年老いた男が
 石畳の上のベンチでパイプ煙草を吹かしている
 広場の壁は高くそびえて
 シャボン玉はそこを越える事は出来ない
 壁はどす黒く、油や泥や、
 騒乱の折に流された人々の血で
 汚れている 
 男の老いた心はすべての悲劇を覚えているのだ
 虹色の宇宙がその壁に衝突し
 弾けて消えるのを男は憂愁のこもった目で見つめている

 女の子は、石畳に躓いて、転び
 シャボン液をこぼしてしまう
 彼女の泣く姿をパイプ煙草の男は憂いに満ちたまなざしで見つめ続ける

 雲が流れていく
 教会の鐘が鳴っている
   
 広場の道化師がやってきて
 とてもこっけいな動きでジャグリングを始めた
 女の子は泣くのを止めて
 その姿にみとれ、笑い出す
 道化師はどこから取り出したのか
 新しいシャボン液を女の子に手渡した

 新しい虹色の宇宙がいくつもいくつも
 空に舞い上がり始めた
 道化師の口元を幸福そうな笑みがかすめる

 あの広場の高く暗い壁も
 どんな歴史の闇も
 君がシャボン玉を吹くのをとめることは出来ない
 君が吹き上げるその世界は、どんなにはかなくても
 あれらの薄暗い影たちよりもリアルなんだ
 今ここには、その虹色の世界しかない

 だからそうしてこぼれるような笑いとともに
 踊りながら
 もっと、もっとたくさんの
 シャボン玉を吹いておくれ 

                            2009年


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詩集2(火水の子供たち) | コメント(2) | トラックバック(0) | 2011/09/15 19:46
コメント
なんとなくパソコンをいじっていたら、辿り着きました。
とても素敵な詩ですね。深く響きました。
これからも楽しみに見させていただきます^ ^
Re: タイトルなし
 ゆか様

 はじめまして!コメント、どうもありがとうございます。
 何か感じていただいたようでとてもうれしいです(〃'▽'〃)
 また遊びにいらっしゃってくださいね♪

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