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インドぐるぐる旅日記 2006④

 
 2006年 3月10日

 カジュラホに入るとき村の入口で僕を待っていてくれた、Mホテルの兄ちゃん。
 多分ホテルのオーナーではないと思うのだが、いつもフロントに立っており、いろんな仕事を
 ひとりでこなしているようだった。
 
 一見20代後半くらいの好青年だが、彼もなかなか日本人旅行者にはしたたかのようで1000ルピーを両替しようとすると
 100ルピーを5枚だけ僕にわたして財布を片付けようとした。

 「5枚しかないよ!」というと

 「あれ?」といかにも気づかなかたように、残りをわたした。
 あのねー10枚が9枚とかならまだミスかもって思うが、半分パクるのは大胆すぎるやろ(~_~;)
 逆に成功したことあるのか聞きたい・・・。

 しかし、僕がカジュラホを発ち、バナラシへ向かう日の朝、彼はバイクでバススタンドまで送ってくれた。
 カジュラホからバスで、サトナという街まで行きそこからバナラシ行きの列車に乗る予定だった。
 彼はバスが到着すると、僕の荷物を網棚につめこんでくれた。
 そして僕にホテルのパンフレットを10枚以上渡して、「お友達に紹介してくださいね」と言った。
 とても仕事熱心だということは認めざるを得ない。
 まあ、こんなパンフ配れるほど友達いないので、それが逆に申し訳ない。
 
 バスは走り出すとすぐにインドの民謡みたいな音楽を車内に流し始めた。
 ふとこの前聞いたバナラシでのテロの話しを思い出した。
 寺院で爆発があり、何人か死んでいるという。
 犠牲になったのもこのバスに乗り合わせているような、素朴な人たちに違いない。
 そのことが何かとても悲しく、許し難く思えた。
 宗教や思想どうしの対立で犠牲になるのはいつも、そんなものとはあまり深い関わりのない一般人なのだ。
 しかもこの民謡を聞きながらバスに揺られる人たちは、日本人や欧米人とは違い、大地の夢の中で
 半ば眠っているように見える。そのような人たちを爆薬でふっとばすということが、ものすごく残忍なことに思えた。

 カジュラホからヴァラナスィーにアクセスする場合は、まずバスか車でサトナまで行って、そこから鉄道の旅になる。
 日本からインドの旅行代理店に問い合わせていた時には、カジュラホ→サトナ間は約3時間で移動可能で午前7時半のバスで
 カジュラホをでれば、11時までにはサトナに着き、11時40分のヴァラナスィー行きの列車には充分間に合うはずであった。
 しかし、代理店の情報が不正確だったのか、バスは11時を過ぎてもサトナに到着しなかった。
 僕は、インド人の中でたったひとり焦燥感にかられながら、こんな無理のあるタイムスケジュールを組んだ、
 Gトラベルの担当への怒りがふつふつと湧き上がるのを感じていた。 
 どうしてくれるんだ!時間に遅れたら鉄道のチケットはふいになるし、ここから先の日程が狂ってしまうじゃないか~・・・・。 
 ようやく、サトナの街に入った頃には、腕時計の針は11時半を回っていた。
 しかし、駅へ行くには一体どこで降りればいいんだ???
 何箇所か停留所があるが、アナウンスも何にもない。
 あるバス停で、多めに人が降りる。
 あ、ここか?もしかして?? 
 僕は席を立って、運転席まで行き、サトナ駅はここで降りるのかと聞いた。
 するとすぐ後ろの席のインド人が、「ここで降りなきゃダメだ!」と言った(多分)。
 僕は大慌てで、網棚のリュックを引っ張り出そうとしたが、ホテルの兄ちゃんが馬鹿力で押し込んだものだから
 ちょっとやそっとのことでは抜けない。

 ふぬお~~~っ(≧皿≦メ) ずぼっ

 やっとのことで引きずり出したリュックをもって、バスを降りる。
 「そのリクシャに乗って行け!」とバスの中のインド人が言った(おそらく)。
 僕は、もう料金交渉なんかをしている余裕もなく、バス停で降りる客を待っていたリクシャ(自転車のほう)に飛び乗った。
 もう、列車の発車時刻まで10分もない。
 あーオートリクシャーにすればよかったかなぁ・・・と思うもあとの祭り。
 リクシャ遅いぞ!もっと急いでくれぃ!!
 時計の針が無情にもそろそろ発車時刻を指そうとしている・・・・ちょうどその頃にサトナ駅に着いた。
 あわてて駅の中に駆け込む・・・・もう11時40分はとっくに過ぎている。
 しかし、おかしなことに、プラットホームの電子掲示板にはまだ僕が乗る予定の電車のトレインナンバーが表示されているではないか。
 しかも発車時刻は12時15分???
 どうやら、幸運にも電車がどこかで遅れているようだ。
 インドの不便さに救われたような格好だった。

 まだ半ば呆然と立ち尽くしていると、インド人がひとりなにか話しかけてきたが、よく聞き取れない。
 僕は列車のチケットを彼に見せて、ちょうどプラットホームに入ってきた電車は自分のか?と尋ねてみた。
 するとちょっと首を振るような仕草がかえってきた。

 彼は「あそこに座ろうじゃないか」とベンチを指差した。
 そこで彼と隣同士に座り休んでいると、小さな子供が僕の前に来て、口に手を運んでなにかを食べる仕草をした。食べ物が欲しいのか、お金が欲しいのかわからないまま、僕は首を振り、目をそらした。裸足の足にはハエが止まっている。僕の隣のインド人にも冷たくあしらわれ、子供は離れていった。
 
 やがてまた轟音とともに列車がホームに入ってきたとき、『この列車だ』と彼が教えてくれた。
 礼を言って彼と別れる。初めての二等寝台の旅。
 天井に近い場所に、やっとねるだけのスペースがある。ここで10時間過ごすことになる。
 下の席も向かいの天井席も、結構混み合っている。
 二段寝台の上段に横になっていると、またお腹が痛くなってきた。下痢は夜中にしかないのだが、刺すようなきりきり系の痛みが慢性的に続いている。もう、5日目になるのだけど。あぁ・・・インドの旅がこれほどハードだとは思ってなかった。

 何もかも予想外。
 こんなにインド人が観光客にうるさいとも知らなかったし、こんなにアクシデントが多いとも知らなかった。
 なぜかブルーハーツの古い歌が口をついて出る。

 ここは天国じゃないんだ
 かといって地獄でもない
 いいやつばかりじゃないけど
 悪いやつばかりでもない
 
 
 さっきサトナ駅で列車を教えてくれた人
 僕をオルチャに連れて行こうとした強引なタクシードライバー
 友達が愛知で働いてると言っていた、リクシャワーラー
 いくつかのこの国の人との触れ合いが思い出され
 自然と涙が滲んだ
 
 土砂降りの痛みの中を
 傘もささず走っていく
 やらしさも汚らしさもむきだしにして、走ってく
 聖者になんてなれないよ
 だけど生きてる方がいい
 だから僕は歌うんだよ
 精一杯でかい声で


 悪いやつばかりじゃないから、僕は旅を続けられる。
 やらしさも汚らしさも、むきだしの美しい世界の中を。
 自分のやらしさも、きたならしさも大いにむき出しにされながら。




 13時にサトナを出発した列車は遅れに遅れて、午後11時を回ったころようやくバナラシに到着した。
 ホームでは僕の名前を書いた紙を持ったタクシードライバーが僕を待っていた。
 バナラシで今夜宿泊するホテルは、デリーの旅行代理店で予約させられたものだ。
 このドライバーはそのホテルの送迎サービスなのだった。
 生まれも育ちもヴァラナスィーだというドライバーのタクシーに乗って、ホテルにたどり着いた時には日付が変ろうとしていた。
 今日も朝にカロリーメイトをひとかけら食ってからというもの何も口にしていない。
 朝7時にホテルをチェックアウト、カジュラホを出て、バスでサトナ、そこから列車でバナラシ。
 移動に丸一日を費やした。
 心も身体もくたくたである。
 チェックインをすませて、部屋に入るとベルボーイが小さなかごに持ったブドウやバナナを持ってきてくれた。
 無料のサービスらしい。とても助かる。どうせ重いものを食べても腹をくだしてしまうので、今晩はこれだけにしておくか。ブドウの甘さが、体にしみ込むようだった。


               
                 其の4 バナラシの迷路


banarashi.jpg



   2006年 3月11日


ハーイ、コニチハ、私はアジャっていいます。よろしく。日本の名前はヒロシね。ニホン人みんなやさしくてベリーグーね

 そのインド人は、フレンドリーそうな笑みを満面にたたえて、握手の手を差し出してきた。

 な・なんだ、こいつは(-_-;)

 ヒロシと言われて、僕の頭には当時、テレビのお笑い番組で「ラモネカ、産婦人科させ~ろ~」という歌をバックに自虐ネタをするあの人が思い浮かんだ。

 hiroshi.jpg

 日本人の旅行者が面白がってアジャにヒロシという名前をつけたらしいが、あきらかに狙ってる感じだ。
 しかし、キャラは産婦人科医ヒロシと真逆だ。
 僕はどうもインドに来てから、親切にしてもらったのは無口で、一見無表情でとっつきにくそうに見えるが真面目な感じの人たちだったので、こういう日本人名を名乗っているお調子者は最初からちょっと警戒心が湧いてしまった。

 昨日バナラシに到着して翌朝のこと、昨日のタクシードライバーが市内を数百ルピーくらいで案内してやると言っていたのだが、ホテルに迎えにやってきた彼はなぜかオートリクシャーで、僕をバックシートに乗せるとガンガー(ガンジス河)の方へ走り出した。
 オートリクシャーのフロントシートにはもう一人インド人がいて、僕に握手の手を差し出してきた。それがヒロシだった。

今日は私のブラザーが君を案内する。終わったらあなたの好きなだけルピーを払ってやってくれ」とタクシードライバーが言った。

 「好きなだけ料金を払う」という言葉に少し不気味なものを感じながらも、僕はこの 流れにそのまま乗っていくことにした。
 というかいつも展開が早いので、よく考えている時間がない!

 だって、デリーの旅行代理店のフレンドのタクシードライバーがタクシーで観光するって言ってたのに、オートリクシャーで来て、そこにそのタクシードライバーのブラザーが乗ってて、名前がヒロシで、彼が案内するって

 もうわけわかんね~~~!!((o(>皿<)o)) !!

 抵抗しようにもどこをツッコミ、どんな英語で伝えればいいかわからないし、
 僕が考えてる間にも事態はどんどん進行している。仕方なくその流れにそのまま乗っていく。
 オートリクシャーを降りた僕は、ヒロシに導かれるまま、バナラシの細い路地裏へと入っていった。
 ヒロシは、ひっきりなしに英語と日本語のちゃんぽんで喋りつつ、歩いていく。
 路地を抜け、階段をあがり、人家の庭のような空間を歩き、もう気がつくとどこにいるのか全然わからない。
 まるで迷路のような空間、遠藤彰子の絵の中に迷い込んだみたいだ。
 路地には牛のフンがたくさん落ちていて、何度も足元ににゅるっとする感触を感じたが、次第に踏んじゃうことが多くて気にならなくなってきた。
 やがて込み入った路地を抜けて、ガンジス河が見下ろせる川岸に出た。

 「ここから火葬場です、写真撮影は絶対ダメね」とヒロシは言った。
 
 ヒロシは近くの河原を指差した。
 火葬場と言っても、何か特に遺体を燃やす特別な施設があるわけではない。
 普通の河原である。
 ただその河原の二箇所から煙があがっていた。
 布でくるまれたような細長いものを、木の棒で転がしながら燃やしている。
 それが遺体のようだ。
 よく話に聞いていた光景、でも、思ったほど衝撃もない。
 
ヴァラナスィーの街には火葬場が二箇所ある。
 マニカルニカー・ガートと、ハリシュチャンドラ・ガート。
 マニカルニカーの方が規模が大きく、ひっきりなしに火葬が行われている。一日に燃やされる遺体の数は200体を越える。 ハリシュチャンドラの方はそれに比べるとやや小規模だが、それでも150体ほどが荼毘に付されるという。
 僕が案内されたのはハリシュチャンドラ・ガートの方だった。
 
 既に河原の二箇所ほどで火の手があがっていた。
 ハリシュチャンドラガートでは一日150体もの遺体が燃やされるそうだ。
 それを専門の仕事にしている火葬職人が燃やしていくのだ。
 やはり聖なるシヴァ神の街バナラシで荼毘にふされると、ニルヴァーナ、輪廻からの解脱が得られるという根強い信仰があるらしくインド中から遺族によって死者がこの街に運ばれてくるという。
 僕は列車に乗せられてインド中からバナラシに集まってくる死体の流れを想った。
 ここはガンジスのほとりの、死の街でもあるようだ。

 その光景を見下ろしていると、新しい遺体が木で組んだ担架のようなものに乗せられて運ばれてきた。体自体は見えないように白い布でしっかりとくるまれている。その上にオレンジ色の布がかけられている。遺体が下におろされると、遺族がガンガーの水を遺体の周りにまきながらその周りをまわった。

 やがて火がつけられ、少しづつ布に包まれた肉体は燃え始めた。
 子供たちがそれを身じろぎもせず見守っている。
 その煙が大きく立ち上り、僕とヒロシの方にも流れてきて、その中に包まれた。
 しかし、なんの匂いもしなかった。

 僕らが来る前から焼かれていたものはもう遠目にも真っ黒に炭化しており、それをまだ火葬職人が大きな棒を使いひっくり返したりしている。
 本当に、こんなものを観光気分で見ていてもいいんだろうかと僕は思った。
 しかしこのように何もかもが人目にさらされているのは日本人の感覚とはかなりかけ離れている。
 おそらくこんな光景はもう完全に日常となってるであろうヒロシが

 「あの焼いた灰はね、あそこに持ってこられるんす」

 と言った。
 
 「え、あれがそうなんですか?」僕は驚いた。

 先ほどまでは気にも止めなかったが、河原の片隅にこんもりとした土の小山があった。
 高さ数メートルはあるだろうか。
 どうやらそれはすべてここで燃やされた遺体の灰のようであった。
 一体、何万、何十万人分の灰なのか見当もつかない。

 子供や、サドウー、蛇に噛まれて死んだ人、牛などは燃やされず水葬にされるという。
 それらは神聖な存在とみなされており、燃やしてはいけないのだそうだ。
 蛇に噛まれた人も、その範疇に入るのはどうやら蛇がシヴァ神の使いだとみなされているからのようだ。


 火葬場を離れた河原で休憩しているとき、ヒロシが、「この街はシヴァ神の街ですから、SOMKINGがとっても有名ね」と言った。僕はヒロシの言わんとしていることにすぐピンと来て

 「Im very interested」と言った。

 「あとである場所に連れていってあげるね。それから、女の人もいるよ。イスラエル人のとっても
きれいな女の人いるところ紹介できる」

 ほ~(^▽^)ヒロシはそんなこともやってるのか。
 しかし、さすがにインドまで来てそんなことはしたくない。

 欲しいのは   (-。-)y-゜゜゜   だ。

 ヒロシは、わかったとうなづき、立ち上がった。
 再び路地裏の迷路を通り抜けると、小さなお堂のような建物の前に出た。

 「さ、入ってよ」

 とヒロシに促されその中に入ると、彼は床に持ってきた包みをひろげた。

 「これガンジャクッキー、葉っぱ、アヘンもあるよ。 一服吸ってみるか?」

 というので紙巻きのジョイントを作ってもらった。
 火のついたそれを何回か深く吸い込み、息を止める。
 ヒロシにも手渡して、二人で吸った。
 何回かそれを繰り返したが、なれない環境にいるためかあまり意識が変化した感じはしない。

 「今日はこれをやって、明日はLSDをしようか?すごいよLSDはぐわーーーっとなるよ。LSDはジキジキにもすごくいい。持って帰って彼女と一緒に使ったら喜ばれるよ」とヒロシはニヤッとする。

 ジキジキの意味はもう完全にわかった(笑)
 確かにLSDは興味がある。でも、この混沌としたバナラシの街で、ヒロシとあるいは一人でそれを試すのはどうも気が進まない。葉っぱの意識の変容が3~5位だとするとLSDは量にもよるが多分、5~10位だ。そしてそのように単純に比較できないほど質的にまったく違う。そんな遊び気分で使うのは違う気がした。しかもLSDと言われても、それが純粋なLSDかどうかは誰もわからないのだ。変な混ぜものがあるのは気持ち悪い。 

 「このクッキーはいくらなんですか?」と尋ねた。

 「50米ドルだよ。葉っぱは、1g15ドルだ」

 うーん、相場なんて知らないけど、なんかかなりボラれてるような気がする。
 彼から買うのはやめておいたほうがいいような・・・。
 しかもなんでルピーじゃなくて、ドルなんだろうか。

 「今日は、どれもやめておくよ」と僕は言った。
 するとテンションが高かったヒロシが急に顔を曇らせた。

 「わかった、でも、今吸った分は彼に金を払わないといけない」

 ヒロシが持参した商品は、彼の知人の売人から借りてきたものだったようだ。
 
 「えっ・・・!?いくらだよ。」

 「それは彼に聴かないとわからないね」とヒロシが言う。

 嫌な沈黙が流れた。
 僕はこのあたりからさっき吸ったジョイントの効き目が悪い方に現れて、不安や猜疑心が増幅し、軽いバッドトリップ状態になってきた。ヒロシに完全にハメられてる気がした。そしてこいつがつながってるその売人がとても薄気味悪く思えてきた。この流れだと何かまずいことが・・・鼓動が突然早くなってくる。しかし、僕はそのまま不安を怒りに変えて彼にぶつけた。というか何か感情の抑えが効かない状態になってきた。

 「でも、それは君が事前に説明しておいてくれるべきじゃないか?それに君も吸っただろう一緒に!」

 僕のテンションがおかしいことを察したヒロシは

 「落ち着いて、ちょっと効きすぎてるぞ。わかった、その分は自分が払う、もう行こう」と言った。
 ブツをすべてビニール袋に入れて、ほこらの一角に隠した。

 よく考えたらここは礼拝の場所じゃないのか?
 こんなところで、こんなことをしていていいのか?
 僕の足元で何かが、パリンと割る音がした。
 見ると礼拝所の飾り付けの一部が床に落ちていて、それを踏み潰してしまったらしい。
 意識がぶっ飛び始めている僕には、それが何か不吉な兆しのようにおもわれた。
 
 ヒロシと元きた道を戻っていると、地元の人が素焼きのツボを僕の足元のすぐ近くに叩きつけ、粉々にした。
 割れる、壊れる、、、
 なにか間違った「流れ」の中に巻き込まれている・・・そんな感覚が襲ってくる。

P3110086.jpg




 ヒロシがふと後ろを振り返り、顔をあげて、近くの建物の上の方にいる誰かと無言でうなづき、なにか合図を交わしている。こいつはなにかを企んでいるんだ。

 「そこでチャイでも飲もう」と、ヒロシが僕を小さな店に連れて行った。

 「さっきは、俺が金を払うっていったけど、じゃあ、いったい1gいくらなら君は買えるんだ」と聞く。

 少し考えて、僕は「10ドル」と答えた。

 「OK、その値段でいいか電話して聞いてくるから、ここで待っててくれ」とヒロシ。

 少しチャイを飲み気分が落ち着いてきていた僕は「OK」と言った。
 やがて戻ってきた彼は「11ドルだ」と言った。

 「わかった、いいよ、それで」と僕が言うと

 「よかった! 日本人やっぱり、ベリーGOODね」とヒロシは最初の満面の笑みを浮かべていった。

 僕はもう早くヒロシから解放されたくなっていた。
 明日も彼は案内するというが、この流れだと、またいろんなショップに連れて行かれるのは目に見えているし、彼の性根がどうも信頼できない。

 「もういい、早くホテルに帰って休みたいんだよ」

 最後に、as you like の観光案内料を払う必要があるのだが、僕は彼に200RS渡すことにした。
 まあ、一応いろんな場所も見せてくれたし、、、
 もっとよこせというかと思ったが、おとなしく受け取った。
 僕はヒロシから受取った「黒い塊」を持って、リクシャーに乗り、今晩の宿へ向かった。
 
 シートに背中をあずけて、街並みをぼんやり眺めている
 なんか、そうしていると・・・

 突然とてもリラックスした、愉快な気分になってきた。

 なんか気持ちイイ~~っ(・∀・)

 なんだ、これ、まだ効いてる。やっぱかなり強かったのかな。

 思考の速度も弱まり、まったく見知らぬ街に一人でいるのに、まるで自宅でくつろいでいるように珍しい風景を楽しむような余裕が出てきた。と、同時にこの意識の変化によって今までとても気を張って旅をしていたこともわかった。ヒロシもいいやつに思えてくる。

 ガンガーを見渡せるホテルにチェックインした僕は、部屋に入ると持参したパイプを取り出し、黒い塊をくだいて入れるとライターで火を点け、煙を思い切り吸い込んだ。そうすると、落ち着いた環境だからか、さっきよりもかなりハイになってきた。ホテルの壁に持たれていると、自分がその壁や空間となにか古い絆で結ばれているような気がしてきて、自分はずっと昔、バナラシの行者かなにかで、この壁のある空間で、大きな大木にでも体をもたせかけて瞑想していたのではないかというイメージが起こってきた。

 やがて僕は旅の手帳に詩を書き付け始めた。
 
 Very strange India!
バナラシ
 みんなあるがままにいかがわしさ全開だ
 leave me alone
 君たちにはもう 関わりたくない
 河とボクと二人きりにしてくれ
 絵巻物を紐解くように
 次から次へと違うインド人があらわれて
 せわしく僕に喋りかける
 まるで一度回すともう止まらない カルマの輪のように
 フレンドの フレンドの フレンド
 ブラザーの ブラザーの ブラザー
 フレンドの ブラザーの フレンド
 あなたたちはもしかしてみんなグルなんじゃないか
 もう僕を君らが回す観覧車から下ろしてくれないか
 君たちが僕を持ち上げて運ぶので
 母なる大地に降りられないよ



 段々吸いすぎて訳がわからなくなってきているが、それでも書き続ける

 続きましては、

 人間のテーマソング

 タンタッラン タン タッラン
 俺は生き物の王様さ~
 タンタララン タンタラン
 みんなよりちょっとだけすごいのさ~

 King of animal! King of animal!

でもみんなよりちょっとだけ悪いのさ~

 海を汚して 川とか埋めて
 ひどいことにしちまうのさ
 悪い王様だから
 クーデター企まれ
 時々地震が起こるのさ~
 
 King of animal!
 バカな王様
 動物たちのバカ王様


 もう段々ぐだぐだな感じに思考が溶解しはじめてるが、それでも言葉を書き連ねるのが面白く、詩を手帳に書き付けたりしながら、ひとりでクスクス笑い、ずっとパイプで煙をふかし続けて、夜までハイに過ごした。

 
  2006年 3月12日 バナラシ


 今朝も、目が覚めるとすぐに昨日ヒロシから買った黒い塊をパイプに詰めると、ぷかーっと一服。
 いや、二服、三服、グニャッとなるまで吸い続けて、二度寝する。目が覚めると正午前。
 ホテルのレストランに行って、トマトスープと野菜チャーハンを注文した。
 レストランの窓からは、輝くガンガーの流れが見えた。
 僕は持参した『ラストバリア』を読みながら、食事を終え、その後ホテルを出て今日は一人で河辺を歩いて見ることにした。
 ホテルから階段を下りて、川原に出ると、川の中ではたくさんの水牛たちが首までガンガーの流れの中にひたり、その水牛の上に裸のこどもたちが何人もまたがって、一緒に水浴びをしている。とっても気持ち良さそうだ。
 遠くに視線を移すと、孤を描いて流れるガンガーに沿って、バナラシの街並みが見え、午後の太陽を浴びて光っている。
 なんだか、そこは日本とはまったく別の時間が流れているみたいに見えた。

P3120103.jpg

vanarasi1.jpg


 河原をそのまま歩いていると、お尻を出して、河原に座り込んでいる人がたくさんいることに気づいた。
 どうやらう●こをしているようだ。な・な・んだ、ここってトイレ??
 河の近くにも、用を足して、河の水で洗い流している人がたくさんいる。
 
 そのまま、川原を通りすぎ、ガート(沐浴場)にあがった。
 ガンガーの岸辺にはいくつものガートが連なっている。
 沐浴だけが行われるのではなく、生活の一部という感じで、子供たちが大勢遊んでたりする。
 山羊や、猿など動物たちも多い。
 あちこちにただ座ってぼーっとしている大人たちの姿も多い。
 ひとりのわんぱくな子供が、子山羊の四足をつかむと、自分も回転しながらぐるぐると振り回し、最後に地面にぼーんと投げつけていた。ぼてっと地面に転がされた山羊は起き上がってあたふたと逃げていく。あまりの乱暴な遊び方(いじめ方?)に思わず僕は笑ってしまう。

P3120117.jpg

 壁に和尚ラジニーシアシュラムの、メディテーションキャンプのポスターが何枚も貼られていた。
 それをなんとなく写真に撮っていると、ひとりのサリー姿の女性とすれ違った。
 彼女の、腕や、顔が紫色のできものでびっしりと覆われているようだったので僕ははっとした。
 いったい何の病気なのだろう。

 何か日本では、存在しないか、隠されている人間の生の一側面がここではすべて、むきだしにされているように思えた。昨日、ヒロシに連れて行ってもらった火葬場の光景もそうだったけど、、、、
 作家の遠藤周作が小説の中で『深い河(ディープリバー)』と呼んだ、それが僕の目の前を流れていた。
 今でもたくさんの生者と死者がインド中から集う聖地、それは日本の聖地とはずいぶん違う。
 一切の汚れを払い落とした(払い落とそうとした)場所が、日本の聖地(伊勢神宮など)とするならば、
 インドのこれはどうだろう。まるでこれは汚れを落とすという発想など最初からないかのような、あるいは汚れもすべて飲み込んだようなそんな場所にある。人々は、ガンガーの流れで沐浴し、ガンガーに灰となって流され、ガンガーで用を足し、ガンガーでとれた魚を食べ、子供たちはその中で水牛に乗って遊ぶ。もうそこでは、生と死や、清と濁の区別など忘れ去られているかのようだ。

 ガートを歩いていると、子供たちが、材木で道に踏み切りをつくり、通せんぼをしている。
 どうやらこの先に進むには、通行料をよこせと言っているようだ。
 もう少し歩こうと思っていたけど、もうそろそろホテルに帰ってもいい時間だったので、この辺でUターンすることにした。

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インドへなちょこ旅行 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2012/06/17 14:00
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