母と歩いた道


                       母と歩いた道




 雨に濡れたアーケード街
 どこかでピエロが踊っている
 コーヒーの匂いがする
 オレンジの灯りがいくつも滲みながら
 揺れていた道

 真夏の駅の中
 むっとする人ごみと
 見知らぬ街の名を連呼する
 熱く焼けたホームのスピーカー
 の声を聞きながら
 僕は母のあとを追う

 水族館の中
 古代魚たちがゆっくりと泳ぐ
 暗い水槽の上にかかる道
 出口から明るい日差しが差し込んでいる
 
 遠い夏の浜辺へと続く
 白い道
 
 僕は
 手を引かれながら
 母と一緒にたくさんの道を歩いた

 いつの間に僕は母と歩かなくなったのだろう
 いつの間に僕はひとりで歩きたいと思うようになったのだろう
 

 母と歩いた道
 その道はどこへ向うわけでもなかった
 ただ太陽と蝶はいつも僕の周りを回って
 その時間は終わることなく無限だった

 それがそんなに特別な道だって
 幼い僕は知らなかった
 ただ光る雨粒と ピエロのシルエット
 コーヒーの匂い
 そして当然のような安心感を抱きながら

その道で拾った白い貝殻を
 僕の右手は今も握り締めている




Dec 2013 



words by Haikata For Mother's day

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詩集2(火水の子供たち) | コメント(0) | トラックバック(0) | 2014/05/14 23:09
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