【朗読】 ヘルマン・ヘッセ著 デミアン序章


 
  



 思い出深い作品である、ヘッセの「デミアン」序章です。

 20世紀初頭、第一次大戦の精神的危機を乗り越えた文豪ヘッセが世に出した作品ですが、その時代感は今とも少し共通するものがあるように思います。

 主人公が幼い頃、シンプルな善悪二元的な世界観は自分の悩みを解消してくれないことに気付いたように、現在外側に打ち立てられた権威の腐敗や崩壊が激しく、何を信じればいいのかわからなくなっています。

 ジンクレールは挑発的で悪魔的でもある神秘的な青年デミアンの助けを借りて、答えを自己の内面へと求めてゆきます。

 そして彼はやがて様々なシンクロの結果、善も悪も統合したアクラプサスというグノーシスの神について知ることとなります。

 ヘッセは多分ユング心理学などの助けも得て、戦争などの巨大な災禍を鳥が卵から生まれ出ようとする姿としてとらえました。

 人間の集合意識が苦悶して、どうにか次のステップへと至ろうとしている姿とみなすことで、巨大な苦悩を昇華したのです。

 この小説の中ではその世界レベルの変動と、主人公であるエミール・ジンクレールの内的葛藤、成長がシンクロする形で発生していきます。最初は内向的な青年の自己探求の物語と見えたものが、世界全体と共鳴し響きあうものとなるのです。

 個人の物語をその狭い枠内で納めるのではなく、人類全体の神話の一部としようとする試み、「不合理と混迷」に満ちた個的な人生を神話的なものへ昇華する試みが見られるように思います。

 そしてこのジンクレールの人生の旅を導くデミアンという謎の青年は、きっと誰の中にも存在する知恵に満ちた意識のシンボルだとも言えるでしょう。

 僕がこよなく愛する一冊であり、自己探求の道を歩む方に是非オススメしたい一冊です。


              

 
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Haitaka Radio | コメント(0) | トラックバック(0) | 2015/06/07 10:46
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