MISERY hide Toshi著『洗脳』より

  






  ハードなロックですが、優しく聞こえるメロディと声が印象的です。

XJAPANのhideさん、お名前はもちろん知ってましたが、曲をちゃんと聴いたことはありませんでした。

  Toshiさんの『洗脳』を遅まきながら読みまして、そこに描かれたhideさんのキャラクターに魅力を感じ、これまたかなり遅まきながら曲を聴いてみた次第です。






 『洗脳』はToshiさんがホームオブハートという団体の幹部メンバー、そして自身の妻から10年以上にも及ぶ肉体的、精神的虐待、金銭の搾取を受けることになった経緯と、そこからの脱却、復活の軌跡をつづったものです。

 奥さん自体が、もともとこの団体のメンバーで、どうやら指導者の愛人でもありToshiさんを引き込むため結婚した可能性もあるような感じで・・・
 入会後は奥さんからも日夜罵倒と暴力を受けることになるという

それが10年以上。よく生きてこられたと思います。

 ここまでひどいケースはあまりないとは思いますが、スピリチュアルなことに関心がある者としてまったく他人事ではないというか。こんな風に自分の人生を、そして心を捻じ曲げられるというのがどれほどつらいことか。

 どうして世間的な価値観に疑問を持ち、癒しを求め、自然な生活をしたい、シンプルに生きたいという願いがこんな形になってしまうのか。

 本文の最初の頃のエピソードを読んでて思うのは、著者は十分に、この団体はおかしい、セミナーには参加しない方がいいかもしれないということを直感的に感知していたのではないかということです。実際、最初のセミナーに参加する当日に熱が38度も出てしまうというのはこれは明らかに、からだか、本能か、何かがストップをかけているような感じを受けます。

 ところが、そんな状態のtoshiさんに、幹部メンバーから次のような叱責が飛びます

 「これがあなたの本質に出会う最後のチャンスです。ほんとうにもったいないことです。」

 「そうやってせっかくのチャンスを無駄にするのがあなたのいつものパターンではありませんか、本質に触れるのを怖がっているのではないですか、申し込んだ時点でもうセミナーは始まってるんです」

 
 このような精神世界独特の言い回しを駆使して、健全な拒否反応は、高次元のものに振れることへの恐怖や、今までの悪い癖に置き換えられてしまいます。

 そして横では妻の守屋氏も言います。

 「二人でいかなきゃ意味がない!」

 通常ならば、それでも自分の違和感を信じることもできるのですが、やはりtoshiさんがその時何かに非常にすがりたい心境であったということと、何よりも一番信頼してるはずの奥さんがすでに相手側のコマとして動いていて、強烈にプッシュしてきたとうのが大きいと思います。
 このような孤立無援の環境では、誰でもこのトラップから逃れるのは容易ではありません。
 奥さんを疑うというのは、自分の心理的足場がさらに崩れることになります。

 そこでいやいやながら参加したセミナーでは親兄弟への怒りをかきたてて、マットをなぐらせ、おもちゃのナイフで突き刺させる、(周りをすべて敵に変換する)、うつぶせにされて罵倒されながら背中をたたかれるなどという行為が数時間にわたって続きます。そして頭が真っ白になったところへ、絶対的な存在としてのリーダーのMASAYAへの隷従が刷り込まれるのです。


 男性四人に囲まれ、かわるがわる背中をたたかれ、泣き叫びながら怒鳴られる。そこで泣かないと

 「もう泣けないほど、今も俺たちのいってることが聞こえないほど、もう凝り固まったエゴの化け物になったんだよ!」

 とさらに背中をバンバンと強くたたかれる。

 するとMASAYAの曲「大空を飛ぶ鳥のように」が大音量で流れる。

 「自分は最悪なエゴ人間に成り下がってしまったと、泣いていいんだよ!」

 あまりの恐怖と怒号と痛さで「ワーッ」と泣き出してしまうと、

 「それでいい、自分が最悪な人間だともっともっと認めていいんだよ!」
 「もっと泣け、もっと喚け!もっと嘆け!お前は本当に悲惨な人間なんだよ!」


 このような人間の心を、自尊心をもっとも乱暴な方法でぶち壊していく方法は、マインドコントロール、そして一部の自己啓発セミナーで使用されてきた方法のひとつです。

 本当に読んでいてかなりつらくなる、この世のものならぬひどい話しですが、しかし同時にXJAPANのHIDEさん、YOSHIKIさんら他のメンバーとの友情や、ホームオブハートを着の身着のままで逃げだしたToshiさんを長い間家に宿泊させてくれる老紳士との出会い(この方は奇しくも昔としという名の自身の子を亡くされていたという)、などが暗闇の中に差し込んだ光のように、一層まぶしいものに感じられます。

 これを読んで、XJAPANの曲、そしてhideさんの曲を聴いてみたくなりました。
 hideさんがいきなりXJAPANを脱退したToshiさんに憤りをぶつけるシーンも描かれていますが、それでもhideさんは自分自身やXJAPANのことのみではなく、仲間としてToshiさんの状態を案じているのがうかがえます。
 
 本文P90
 
 数日後、僕の所属事務所は「トシはまったく知らされていなかった解散劇」という僕を擁護するような記事をある週刊誌にしかけて出した。その記事を見たHIDEが怒って僕に電話してきたのだ。

 「なんだよ、あの週刊誌の記事は?」

 実際、記事の中身については事前に知らされていなかった僕は、HIDEから聞いたその内容に驚いた。そしてなによりもHIDEが僕に初めて激怒したことにももっと驚いてしまった。

 「ヒデちゃん、僕はその内容は知らなかった。だけど自分の事務所がやってしまったことだ。本当に申し訳ない。ごめんなさい」と謝った。
 
 そして、ちょうどセミナーを受けたばかりだった僕は、セミナーで気づかされたことをHIDEに話していた。幼少時の痛み、劣等感からロックスターにまでなったが、空しかったこと、実際自分の周りはトラブルばかりだったことなど、自分の幼少時からの痛みや心の傷や劣等感をさらけ出し人に伝える、セミナーで言ういわゆる「シェアー」を初めて外部の人にしたのは実はHIDEだったのだ。

 実際僕がXJAPAN時代、トラブルだtらけだったことを知っていたHIDEは、その話を「うん、うん」と聞いてくれていた。
 最初は怒りの様相だったHIDEの電話も、最後はHIDEから

 「トシくん、今度一緒にゆっくり飲みに行こうよ。またその話し聞かせてよ」
 「うん、わかったよ。電話してくれてありがとう、またね、ヒデちゃん・・・・」

 その20分ほどの電話がHIDEとの最後の会話だった。



 hideさんは、1998年に亡くなっています。諸説あるようですが一応公式には自殺ということになっています。 
 その前年1997年、大みそかXJAPANの解散コンサートがおこなわれた時、Toshiさんは洗脳真っ只中の状態で幻聴と闘いながら東京ドームの巨大なステージに立っていました。
 なんとこの日も地下室で三時間にわたり罵倒と暴力を受けてから、4時間にわたるラストステージに向かったというのですから、驚きます。
 この最後のライブでもtoshiさんは、hideさんの存在に救われたようでした。
 動画に残っていますが、HIDEさんに何か声をかけられたToshiさんがとてもいい顔になるのが印象的です。

 大切なものっていうのは、いつも本当に意外と近くにあるのかもしれませんよね。

 本文 p87 

 HIDEからの最後のプレゼント

 一曲目の演奏が終わり、何をしゃべったらいいのか、言葉を失った

 「XJAPANのラストライブを迎えました・・・」

 やっとの思いでそこまで言うと、また言葉を失う

 するとまたMASAYAと守谷の声が聞こえてくる

 「ハイエナのようなファンにちやほやされて鼻の下を伸ばしてるうじ虫男!」

 瞬間、YOSHIKIが激しくドラムを打ち鳴らした。

 そして思わず叫んだ。

 「気合入れていけ~!」

 数曲ののちまたトークの機会があった。そこでも何を語ったらいいのか、言葉に詰まっていた。

 するとまたあの声がとりついたように聞こえてくる。

 「お前のような宇宙的犯罪者は地獄のような人生を送る」

 突然、僕のそばにギタリストのHIDEが近寄ってきていた。

 赤い髪の毛にエナメルに光った赤い衣装。赤いハートのマークの入ったポップなデザインのギターを持ったHIDEが僕に何か叫んでいる。そして、大きく手を広げてジェスチャーをしていた。声は歓声にかき消されていたが、HIDEの声がかすかに聞こえた。

 「トシ君、パーッと、パーッと!」

 その顔には、派手なメイクを施していたが、口をちょっととがらして横に曲げた彼特有のはにかんだ笑顔だった。

 四月に脱退を申し入れてから八か月間、メンバーの誰とも話していない。コンサート直前のリハーサルでも、誰とも目を合わせなかった。そしてステージ上では熱狂するファンとも目を合わせられないでいた。孤立感、罪悪感。これでよかったんだろうかと思う心。様々な思いが交錯していた。そして頭の中で響くMASAYAと守谷の罵倒の幻聴。

 そのすべてを、HIDEが振り払ってくれた瞬間だった。

 そして僕は思いっきり東京ドームいっぱいのファンに向けて、そしてメンバーに向けて、そして自分自身にむけて叫んだ。

 「悔いのない有終の美を飾ろうぜ!」

 「やるときゃやれ~!!」





















 





 

 


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好きな歌 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2016/12/11 16:18
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