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The Listenning hill~大好きな場所~ 【Poetry】


                  
                     The Listenning hill~大好きな場所~                 

 僕が世界を聴く場所
 それは小さな丘の上
 夕陽と星が巡る
 大きな樹の根っこに腰をおろして
 春にはジャスミンの風に乗って
 秋には金木犀の風に乗って
 世界が僕にささやきかける
 聴こえてくるのは
 見知らぬ港の汽笛の音
 古いシネマの中
 恋人たちの甘い会話
 兵隊たちの煙草の匂い
 世界の音は人生への予感を震えさせる
 そうして目を閉じていると
 世界も僕を聴いているのがわかる
 夏草の匂いに包まれて
 僕は完全に幸せだった
 丘も僕を大好きだって知っているから 
 ここは世界に一つだけの
 大好きな場所

 日が暮れると丘は僕を家に帰らせる 
 世界の音が小さくなり
 あまりに座りすぎてくたびれ
 なんだかさびしい気持ちになる
 ママが家で焼くドーナツの匂いが恋しくなる
 そんな時 僕はさっさと立ち上がり
 振り返りもせずに丘を駆け下りて行った
 夜空には無数の星座が巡り始める
 ギリシャ神話の神やさそりが僕をにらむ目が
 怖かった

  丘がそこにいさせてくれないのは
 聴くことをやめて生きねばならない時

 18の夏
 丘の上で初恋の人と別れた後
 僕の足は丘から遠のく
 もうここには来たくない
 二度と来るもんか
 ここに居ても丘はもう何も聴かせてくれない
 丘も僕が嫌いになったんだ 
 こんなつまらない町にいるもんか
 遠くへ行くんだ
 ずっと ずっと 遠くへ
 

  僕は長い旅をした
 世界の音を聴きながら
 それを肌に刻み込んだ
 僕の乗った汽船の音や
 僕が破り捨てた写真の音がすべて
 世界の音となり
 時の絵筆が
 僕の髪に何本もの白い軌跡を描きつけた 

 今では僕は知っている
 あの丘がいつでも
 僕を愛していたことが
 僕を愛していたから
 ここにいさせてはくれなかったことが

丘は僕に尋ねる

 <生きたか?>

 僕は答える

 「ああ、生きた」

 丘はまた尋ねる

 <聴くか、また、あの時のように>

 「うん、聴くよ」

  根っこに腰を下ろして
 目を閉じる
 何も変わっていない

 そう ここは僕の大好きな場所 
 世界と僕がつながる場所

 また 生き始める時まで
 僕はここに座って
 世界の音に耳を澄ます

 夕日が沈み
 夜のとばりが降りる
 ギリシャの神や獣たちが冷たい闇を巡り始めても
 きっともう、夜明けまで大丈夫だ

 
                                                 2017  words haitaka


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| コメント(0) | トラックバック(0) | 2017/12/22 17:33
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