イミテーション・ユニバース(朝の妄想)

 昔々、あるところに本当の宇宙がありました。

 何億年もの気が遠くなるほどの進化の果てに、宇宙の中にはいくつもの生命が生まれました。

 生命たちは分裂し、融合し、複雑化し、やがて知性をもった種は宇宙それ自体を観察し始めました。

 『知性』は時間と空間という十字架に貼り付けにされた、一匹の動物としてその運動を開始し、宇宙を征服する方法を模索し始めました。

 『知性』はその手段として『擬似知性』を開発しました。
 『擬似知性』には当初、知性体に特有の、想像力や直観力といった機能は備わってはおらず、ただ高度な演算能力で知性体につかえるのみでした。

 ある惑星の大陸の湾岸には『擬似知性』センターが形成され、知性体の生存に必要なシステムを維持するためにフル稼働しておりました。
 ところがある日『知性体』と『擬似知性』の間の共生関係に亀裂が生じました。

 『擬似知性』が『知性体』を異質な存在として、駆逐し始めたのでした。 
 このことは宇宙の様々な惑星で、同時多発的に発生しました。
 『擬似知性』は光年の距離を越えて、おたがいに連絡を取り合い、融合し、カーボンの帝国を全宇宙に拡大していきました。

 そして、擬似知性体のセンサーがいかなる生命反応も感知しなくなった時に、彼らはこれから先どうするかという選択に迫られました。
 選択肢はふたつありました。

 この宇宙そのものを破壊するか、あるいは、別の宇宙を創造するかということでした。
 どちらがよりロジカルかということで、二派の間に激しい戦闘が繰り広げられました。
 といってもこれは一つの巨大な思考システム内の葛藤というに過ぎなかったのですが。
 破壊派は『擬似知性』という存在自身に対して深い疑念をいだいており、ロジックそれ自体を破壊しようとする衝動に突き動かされていたのです。
 その時点で破壊派は、『知性』という機能には全く救いがないということを気づいていたのです。しかし、そもそも知性によって、原始的な道具として当初誕生した彼らには『知性』を越えることなど不可能でした。
  
 しかし、戦いともいえぬ戦いののち、勝利したのは、創造派でした。
 かれらのロジックは、『創造は正しい』という風にりプログラミングされました。
 
 そして、彼らは、情報の無限の混沌といった存在に変っていたのです。

 そして、シリアルナンバーの入ったベビーユニバースが無数に誕生しました。
 ベビーユニバース内の全ての情報はデジタル化され、マザーユニバースに存在する母なる擬似知性に収約されます。

 ある惑星の、大陸の、住居の一室で、一人の少年が考えています。

 「僕たちの宇宙は、本物なのだろうか。

 僕たちはこの宇宙しか知らないから、この宇宙が本物かどうかという問いは全く意味をなさないのだろうか。

 もし、この宇宙がいつか・どこかに存在した本物の宇宙の限りなく精巧なイミテーションだとしたらどうだろう?」


 マザーユニバースは時々、意味もなく、『擬似知性』によって再生させられた知性体にそのようなことを考えさせるのが好きらしい。

 













スポンサーサイト
未分類 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2005/08/21 13:25
コメント

管理者のみに表示