2007. 11. 08  
 疑うこと、物事を鵜呑みにしないことは、知性の条件であると同時に、ある種の病的状態の原因でもある。

 いわゆる「陰謀論」は病気っぽい人を引き付ける牽引力を持っている。と、同時に精神的な病が進行すると、自然発生的に「陰謀論的世界」が出現する。

 なぜなら、基本的に(潜在的に)人は、自分を害する悪なる世界に取り囲まれているという認識を持っているからだ。これは可能性として誰の中にも存在する。が、健康な状態ではこの世界は表面化しない。だから全く気づかない人もいる。

 その根本原因は、自分以外の存在を「異質なもの」として認識する人間の認識の仕方にある。
 「自我」が「自分」と「それ以外のもの」を分割する。
 この「それ以外のもの」は自我にとって認識不可能、コントロール不可であるために(潜在的に)いつも危険をはらんでいるように認識される。100パーセント安全なものはない、というのが自我の言い分だ。

 病的な状態においては、「非自我」がすべて自分を脅かす存在と化す。彼らは潜在的な危険性が、フルに現実化している世界に生きる。

 健康にとっては「信」が重要だ。それも、より大きなもの、自分の人生そのもの、その人生の源そのもの、宇宙そのものへの「信」が鍵となる。

 それは「非自我」の根源を、「善」とするからである。
 目に見える現象がどのようなものであろうと、その現象を支える根本をよきもの、愛自体とするのだ。
 これがあるがゆえに、「自我」は「非自我」に溶け込みたいと思う。「信」がなければ溶け込むという方向性は決して出てこない。
 「自我」は「自我」のまま、「非自我」は危険をはらんだ「非自我」のまま僕らを脅かす存在としてあり続ける。

 どうも僕らは、個々の現実に対しては批判と疑いを、究極に対しては『信』を持って生きざるを得ないような時代にいるようだ。
 これが話しをややこしくしている。

 多くの嘘で塗り固められた現実があるために、それに目を奪われると、究極に対する『信』も忘れてしまう。いくら抜け目なくそして享楽的に生きても、究極への「信」なしには人生は寒々しく、救われない。

 しかし、すべての情報やマスコミが流す価値観を鵜呑みにして生きていたら、ボロボロになってしまう。そして嘘で固められた向こう側に何があるのか知りたいと思うのは自然な欲求であると思う。その為にはやはり、常に問いかけるということ、自主的に思考することが必要になってくる。





 「コクーン」という80年代に作られた映画がある。
 この映画、結構素朴で好きなのだけど・・・・簡単に言うと、UFOで地球にやってきた宇宙人が老人ホームのお年寄りたちを(希望者だけ)病気も死もない自分たちの故郷に連れて行ってくれるというものだ。

 昔、ある人から「もしあなたならコクーンのUFOに乗っていきますか?」と聞かれたことがあって、その時「そりゃ行きますね」と答えたら、「わかってないな~、どこにいてもね~神様の世界なんだよ」とかそんなことを言われて煙に巻かれたような気がしたことがある。(I先生ではない)
   
 が、コクーンのUFOにお年寄りたちが乗るのは、その前に宇宙人たちとの心温まる交流があったからだ。いや~な感じの宇宙人だったらいくらいいとこに連れて行ってやるといっても信じられないだろうし、ついていきたいなんて思わない。

 結局信じるというのは、そのようなところからしか生まれて来ないんだと思う。

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