女神の性質②

 二年前に書いた記事だけど、昨今の状況とかぶってる気がするのでまたあげておく
 2011年 3月29日





 2009年1月21日

  先の投稿で、世界内世界に存在しているという事実が苦を宿していると書いた。
  それはマトリクス内存在にとって、いつパールバティ(正のマザー)がカーリ(負のマザー)に変身するのかまったく予期できないからだ。
 しかし、しばしば僕らはある種のマトリクスには盲目的にされており、それがカーリ化した時に初めてそのなかに生きていたことに気付くという事態になる。

 例えば、そのひとつが「経済システムマトリクス」だ。 
 金融恐慌が進行するにつれて、メディアも今までの市場原理主義がいけないとか、米英中心のシステムや、実態のない金融カジノで金を増幅させてきたつけが回ってきたのだとかいろいろ言い始めたが、それまではその構造などメディアで真剣に取り上げられたこともあまりないし、僕らも素人が理解するには複雑すぎるのでその構造には盲目にされていた。
 だがひとたびそれがカーリ化すると、そのシステムの矛盾をすべて一般人がかぶることになるわけである。矛盾は最初からあった。不運が重なったのではない。根本的に生き方がおかしかったのだと思う。その巨大なる矛盾の上に、僕らの生活は成り立っていたわけだ。

 もうひとつ例を挙げれば、例えば日本人は諸外国に比べて、国家マトリクス内存在だという認識が希薄であると思う。また「日本民族」であるという自覚も薄い。逆に「日本民族としての誇りを持て!」なんてことを誰かが言うとちょっとヤバイ人に見える。
 これに比べて独裁国家である北朝鮮や、民族的に大きな困難を背負わされてきたパレスチナの人々などはいやが上でも国家・民族的意識は強固にならざるを得ない。
 そんな民族・国家意識などというものは争いの火種であるので、ない方がいいという意見もあるだろう。しかしその認識がないのが果たして本当にいいことなのか、僕にはわからない。
 もし『国家』というものが存在しなければそれでいいだろう。
 だが実際には現在、『日本』は国境線によって他と隔てられた、マトリクス(世界内世界)だ。
 ということは常に、この世界内世界の状況によって、また他と分断されてることによって苦を背負う可能性を秘めているということでもある。それがはっきりするのは、困難な時代が訪れた時であるだろう。
 この、「日本国家」のように潜在的に僕らを飲み込んでいるカーリに対してあまりにも無自覚であるのは、自分が肉体を持っていることに無自覚なくらい危険なことかもしれない。現在の日本はパールバティというより、透明化したカーリと言った方がいい不気味さがある。この透明存在の顔を目を凝らして見る必要がある。
  『国家』は潜在的に危険なものだ。
 それは原初の形態化、ビナーに苦の種が存在しているのと同じだ。

 現代人の多くの人は、国家のみならず、組織というものへの不信感を強くしている。
 『組織』とはミクロでは人間がふたり集まった友人や恋人関係であるだろうし、マクロでは多国籍企業や国家だ。その中でも『宗教組織』のイメージは悪い。
 1995年、あの組織が起こした事件以来、人々は宗教組織(カルト)への警戒を強くした。
 カルト組織への警戒感は、カーリ化したマトリクス内にとらわれる恐怖に基づいている。(誰もこんな言葉で考えないと思うけど)ネガティブマザーは、わが子をその腹の中に飲み込み、幽閉した後、破壊する。
 実際あの教団の施設内では、小部屋への幽閉や、暴力、薬物によるマインドコントロールなどが行われていたとされる。
 これは極端な例だが、人はある組織に入る時、自分の何かを・・心理的自由や金銭やその多いろいろ・・・を奪われる可能性を感じやすい。
 この現代には、人間が構成する組織全般への根源的な不信感が広がっているように思えてならない。 

 組織にとっての理想は、ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワンの精神だろう。相互扶助の精神だけが、組織をカーリではなく、パールバティ、正のマザーにする。そして、その組織は外側に開かれたもので、全体に対してもワン・フォー・オールとなる必要がある。
 
 逆に、組織の一部が大勢の構成員を、心理的・物質的に搾取するシステム、または組織内部はまとまっていようとそれが全体に対して害を及ぼすような(詐欺集団のような)システムは負のマザーに支配されている。いくら組織が繁栄しても、それが全体の犠牲の上に成り立っているなら、構成員は自分自身をネガティブなエネルギーの中に閉じ込め、究極的には自己を損なっているからだ。(閉じ込め、破壊する)他を損なうことが、自己を損なうことになるのは、それは全体(他者)とは、最終的には自分自身であるからに他ならない。

 カルト宗教、悪質企業、学級崩壊や家族崩壊。
 このような現象は人から共同体への信頼を徐々に奪っていく。
 引きこもりやニートという現象も、あらゆる共同体への不信感の拡大と無関係とは思えない。
 彼らには大口を開けて、すべてを飲み込むカーリの「幻影」が見えているのだろう。
 もし社会に出て働くということが、自分の感性もなにもかもすり減らして、病気になるほど労働するということであるとすれば、社会や、彼らがそこで働く「企業」というのは、「閉じ込め破壊する」カーリ以外の何物でもない。(もちろんこれは極端な見方ではあるが)
 その「閉じ込め破壊される」事態を避けるために、自室というもうひとつの「子宮」にこもらねばならなくなる。だがTVやゲーム、好きな本やアニメに囲まれた部屋もそれが長期化すればやはり人を損なう母体となってしまう。彼はやはりカーリの悪夢にうなされて夜中に目を覚ますことになるだろう。
 彼らが求めているのは、自己を受け入れ、育ててくれる、「何か」、「誰か」、言い換えれば女性性であり女神(ポジティブマザー)の力なのである。
 自室という「子宮」はこの、人を成長・変容させる女性性の代用品なのだが、代用品とは言え、人が困った時に必ず女性性にすがるのは非常に興味深い。それにカーリも彼らに何かを必ず教えるのだ。
カーリは単に破壊者ではなく、厳しい教師の顔をも持っている。

 僕は引きこもり状態の時、実際よくカーリ(ネガティブマザー)の化身が登場するような夢を見た。
 大きな無人の屋敷をさまよっていて、薄暗い部屋にたどり着くと、そこには一人の女が描かれた絵がかかっているのだが、その顔は下半分だけがライトアップされ口元しか見えなかった。その口元は笑っていた。その絵は屋敷の女主人の顔だと思うのだが、僕は彼女が非常に恐ろしく感じたのを覚えている。床にはいまだ生まれざる胎児の写真が無数に敷き詰められていたからだ。

 この他に、カーリ化する可能性のある、又はすでにしているマトリクスは以下のようなものが考えられるだろう。
 ①エネルギー供給システムマトリクス→例えば中東で戦争が起こると、石油は一気に高騰する。
 ②食糧供給システムマトリクス→日本に輸入が途絶えると、手に入る食料は激減する。
 ③ガイアマトリクス(地球内世界そのもの)→異常気象や天変地異の増加によりカーリ化する
 ①と②に関しては現在のマトリクスの仕組を変容させることで、カーリ化する危険性を減少できる。
 例えばロシアから石油を直接輸入する、代替エネルギーの開発を急ぐ、食糧自給体制を確立するなど。
 その為には、まずそのマトリクス内にいるという認識が必要になる。

 なお前回、今回とマザーの否定的側面をカーリ、肯定的側面をパールバティと便宜的に書いたが本来このように分割できるものではないと思う。世界内存在として形態化することによって生まれる影響として、「閉じ込められ壊される」と「愛され育まれる」の元型的なふたつのパターンが存在し、それらは『世界内世界を形成する』という原初の女神の活動によって発生しているということを言いたかったに過ぎない。本来は、このふたつが融合したひとつの母性しか存在していないし、一見ネガティブなものにもポジティブな側面が必ずある。形を経験することが、形を超越する学習なのだ。だから形を持つことによって発生するネガティビティを知ることも当然重要となる。
 そして形を越えた世界を垣間見させるのは、形の創出者であるところの原初の女神、至高のアニマ・マザー、「永遠の女性性」である。僕らは彼女の娘・息子たちだ。

  最後にスタニスラフ・グロフのBPMの概念を書いて終りにしたい。
 グロフはLSDセラピーや、過呼吸を利用して変性意識に人を導くホロトロピックセラピーを指導していく過程で多くの人が出産時の記憶に拘束されていることを発見し、これはBPM(Basic Perinatal Matrix)基本的分娩前後のマトリックスと名づけた。
 BPM1は子宮の羊水に穏やかに浸っている状態で、その状態が心地よいものであれば胎児は「大洋的感覚」、二元性のないすべてと一体であるという感覚を感じている。平和、静寂、平穏、歓喜が体験される。しかし逆に状態があまりよくなければ、その体験は汚染された自然のイメージや、強制収容所のガス室で死んでいく囚人と自分を一体化させる。ここですでに、世界内にいることで発生する苦が始まっているのである。

 続いてBPM2は子宮口が開く前に、子宮が収縮を始める段階だ。
 この段階では平和な世界は終りを告げ、胎児は肉体を締め付けられる。マザーのカーリ的側面が顕著になってきたのだ。出口(子宮口)はいまだ開いていないのに、世界が自分を押し付けるように周囲から迫ってくる「出口なし」の状況だ。この体験は「敵意に満ちた世界に閉じ込められる」イメージとしてセラピーなどで浮上してくるという。
 BPM3は子宮を追い出され、狭苦しい産道を進みながら誕生に向かって苦心する段階。
 そしてBPM4で世界へと誕生する。
 グロフは現代をBPM3の時代と呼んでいたと言う。

 『BPM3とは、出生プロセスのもっともきつい局面であり、胎児が自らの死に相当する出産を前にして、著しい葛藤にさらされる状態を表している。このような状態では、超越(出産)への希求が高まると同時に、鬱積したエネルギーの劇的な消費を促すエロス的欲求や攻撃性が高まるとグロフは言うのである。こうしたグロフの見解は単なる推測によって産み出されたものではなく、サイケデリックな物質を使った臨床的な観察によって産み出されたものであることに注意してもらいたい。
 我々は現在、エロスと暴力が社会に蔓延しているのを目撃している。こうした現象はある意味憂慮すべきものであり、世紀末的な現象として慨嘆する向きも多い。しかし、グロフの考察に従うなら、エロス的欲求や暴力衝動の高まりは、超越的欲求の高まりを示す一つの兆候とみなすことも可能なのである
』 
                             菅靖彦 著 『変性意識の舞台』より
 

 もしや現在多くのものがカーリ化しているという事実も、エロス的アニマの増殖も、未知への誕生の生みの苦しみなのだろうか。そもそも誕生とは胎児にとっては古き世界の死である。自らは望むべくもない。しかしプロセスは「勝手に」進行する。多少体を締め付けられようとも、母なる宇宙への信頼が問われている。
 

 西洋文明終末期の
 最終的な崩壊と成熟の
 人間性のプロセスは次のようになる。

 1、マニピュラチャクラの否定。  
   すなわちエゴ・トリップの頽廃。

 2、ムラダーラ・チャクラへの退行。
   すなわち、セクシャルな事柄や麻薬の流行と、その反動としての超管理社会。

 3、死もしくは狂気についての狂気的関心。あるいは、その反動としての社会的平和や宗教への熱狂。あるいは戦争と暴力。

 ここまでで、ムラダーラチャクラへの退行の試みは、終息する。
 つまり西洋文明の実質的崩壊である。

 4、だが一部分では、
   この崩壊を乗り越えて、真の成熟過程が進行する。

 5、死についての非抑圧的な正常な関心。

 6、そして
   メンタル体、アナハタチャクラの爆発。すなわち超越的な慈愛と、純粋な瞑想行為の発現。

 
 ダンテス・ダイジ 『アメジスト・タブレット・プロローグ




スポンサーサイト
女神の性質 | コメント(2) | トラックバック(0) | 2011/03/29 16:51
コメント
最近読んだ漫画の悪役の台詞に、「人間は苦痛より快楽に弱い生き物なのだよ。ふっふっふ。」というものがありましたが、社会のマトリクスも表面的な快楽、快適さによってそれを認識することが出来なくなってしまうという性質があるのだろうと思います。
釈迦も我々の世界の本質を一切皆苦と認識するところから悟りの修行がスタートしたわけで、ある意味、今のカーリ化した世界の状況もマトリクスの本質を認識し、そこから脱出するチャンスであるとも言えるかもしれないですね。
私は、「マトリックスレボリューションズ」のネオとスミスの最後の対決のシーンが大好きなのですが、あれは人間の意識の変容のプロセスを描いているような気がしてならないのです。
マニピュラからアナハタに上昇するには、あのくらい大変な自我との戦いがあるのかもしれませんね。





>しらさん

コメントありがとうございます♪

>釈迦も我々の世界の本質を一切皆苦と認識するところ>から悟りの修行がスタートしたわけで、ある意味、今の>カーリ化した世界の状況もマトリクスの本質を認識し、>そこから脱出するチャンスであるとも言えるかもしれないですね。

カバラを知った時、釈迦の「一切快苦」(こんな風に変換されちゃったw)の認識というのはまさにビナーが与えた霊的体験ではないかと思ってしまいました。母体内部がカーリ化するのは多分出産のプロセスなんでしょうね。グロフは現代をBPM3(産道にいる)と言っていたようですが、どうも子宮内部の様子が一変して産道に押し出される前のBPM2ではないかとも思えますね。あれ?なんか世界が「変」だよ?という感じの認識。産道に出た胎児のストレスはもっと大きい気がしました。

スミスって面白い存在ですね。マトリクスのエージェントも廃業しちゃったまさに「自我」ですね~。マトリクスも飲み込むガン細胞みたいなイメージでしょうか。

管理者のみに表示