無垢への夜明け

                     無垢への夜明け



 一粒の砂の中に世界を
 一輪の野の花に天国をみるために
 君の手のひらに無限を
 ひとときに永遠をとらえよ 
                     ウィリアム・ブレイク



 君の一日が始まるとき
 新たに明けゆくこの朝に 世界の原初の創造を
 新たなる目覚めに
 君の誕生した朝をとらえよ

 僕の誕生の朝のフィルムは
 巨大な時の倉庫の中で
 どこかに消えてしまった

 僕は今朝のような小鳥がさえずる青い夜明けに
 何も知らずに眠っていた
 あるいは何もかも知りすぎているがゆえに、
 眠っていたのだ

 その時に
 窓の外を吹き抜けていた透明な風を想え

 そしてまた一日が終わる時がくれば
 うつろいゆき 沈みゆく
 たそがれの風景に
 この宇宙の終末を
 君の眠りに 君に死にゆく夜をとらえよ

 君の肉体のまぶたが二度と開かなくなるその時
 君の唇に浮かんでいるのは安らぎか 苦痛か

 生きとし生けるもの
 すべて生を受け 消えてゆく

 君の誕生という、確かさ
 君の死という、確かさ
 人生とはこのふたつの確かさの間に張り渡された
 不確かな一本の弦である

 よろこびに 悲しみに震え
 神の手によってかき鳴らされ
 ささやかに歌う弦である

 その歌は無数の歌と共鳴し
 宇宙を流れ はるか銀河の中心へと帰っていくことだろう

 君のささやかな悦びと悲しみに
 この惑星の60億の人類が歌う
 宇宙交響楽をとらえよ

 君の誕生の朝
 君は熱い血にまみれて
 母の産道を通り抜け 膣を押し開いて
 この世界の空気を吸い込んで 力いっぱい泣いた
 その最初の一息を想え

 胎内に君の動きを感じた時の母の想いを、想え

 そのあまりにも密な血と痛みの
 赤裸々な絆に

 宇宙と君との絆をとらえよ

 宇宙は今でも
 血に濡れた裸のままの君を
 裸のままにその胸に
 強く 強く
 抱いているから


                              2008年
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未分類 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2011/08/16 19:00
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